王国一のビックカップルの婚約は、毎月開催される王家主催の夜会で、報告された。
同時にロザリンド王太子妃の懐妊報告も行われたので、出席者のどよめきはなかなかおさまらなかった。

「おめでとう、ロザリー」

「ありがとうございます」

頬を赤くして、お腹を撫でるロザリーが幸せそうで、クロエは心からうれしくなる。

「クロエさんこそ。前からバイロン様とお似合いだと思っていたので、うまくいってくれてうれしいです」

「……ありがとう」

王家の兄弟と、イートン伯爵家の娘ばかりが縁続きになっていることを喜ばないものもいる。
バイロンとクロエの関係は、貴族間においてはそう歓迎されるものではないのだ。
それだけに、素直に喜んでくれるロザリーの気持ちがうれしかった。


お披露目を終え、姉妹同士が仲良さげに話しているのを、ケネスは腕を組んだまま、見守る。

「……いざ、嫁に出すと思うと惜しくなりますね。バイロン様、やっぱりやめませんか?」

ケネスの物騒なつぶやきに、あきれたようにため息を着くのはバイロンだ。

「今さらなんだ。それよりも相手を決めなければならないのはお前の方だろう、ケネス。伯爵家の跡取りが、いつまで独り者でいる気なんだ。妹離れ出来ていないのはお前の方じゃないのか」

「まあ、そうかもしれませんね。ザックにロザリーがクロエに殿下がとそれぞれ相手を見つけ、ようやく肩の荷が下りた気分ですが、だからといって自分の相手を探そうという気にはちょっとなれませんね」