何とか決着を付けることができたのだと思わずため息を零す。
「それで、こんな場所でどうしたんです?」
助けてくれた男性の存在を無視して安堵していた私は慌てて、男性の影を頼りにその方向に向かって頭を下げた。
「助けていただき、本当にありがとうございます」
「繁華街ならまだしも、こんな細い道にスーツスタイルで居るのは些か怪しいですよ」
どうやらここは繁華街から少し離れた道らしい。
繁華街の客引きにしては流石に強引すぎるものがあると思ったら、そう言うことだったのかと一人納得する。
確かにそんな場所で女一人で歩いていたら、そういう目で見られてもおかしくはないだろう。
急に羞恥心で感情が乱れ始めた私に、助けてくれた男性は優しく声を掛けてくる。
「何かお困り事でも?」
ここはこの男性に甘えてもいいのだろうか、それとも嘘をついてこの場を終わらせるべきなのだろうか。
ただ自分の現在地すらも分かっていないこの状況で嘘をついて、この場を離れるのもリスキーな気もしてしまう。
「実は、その……」
助けてくれたこの男性が善人であると信じて、私は今のこの状況になった経緯を弱々しく説明し始める。
「目が、急に見えにくくなってしまって……方向感覚がないんです。誰かを頼ろうにもスマホの画面も見えなくて」
「……急に目が見えない?いつから?」
「ほんの15分とかその位前ですかね、パソコンの画面が急にぼやけ始めて、今は何となく影が見えるくらいなんです。それであの、駅まで送ってもらっても良いですか?それか、タクシー呼んでもらうでも大丈夫なので」
今はとにかく早く家に帰ってこの体を休めなければ、本当に目が見えなくなってしまうかもしれないこの恐怖心を消し去りたくてしかたなかった。



