もう片方の手を杏の後頭部に回す。


壊れないように
でも強く引き寄せてキスをした



唇から伝わる熱が、俺を熱くさせる


好きだよ
本当に



本当に惜しいことなんてない

すべてあげれる



だから全部欲しいと思うのは、ワガママだろうか


でも急ぐことはない

杏は帰ってきたんだから




「み、み、道端で!!キスしてしもた!!!」



そう突然テンパり出した杏も、いつもと変わらない杏で、とても安心した。

あの時の上目遣いと目の潤み方は、どこへ行った。そう思ったけど、笑った



「志木さんが監視カメラつけてるかもな?見られたかもな」


「こ、殺される!20歳になるまで、キスすんなって言われたのに!!!」


…ほらな?いつも通りだろ? 
あんなキスの後に、やいやい騒げる杏が、俺は好きだ。



「帰るぞ」



そう言うと、落ち着いたのか、歩き慣れた道を歩き出した。



手を伸ばせば


杏はその手を取ってくれた




一度は振り払われた手。

助けなんていらないと言われたこともある。



でも今こうやって俺の手を取ってくれるなら…


俺から手を離すことはないから。






「みんな!!ただいま!!!!」





この笑顔を守るために



……