自分の部屋。初めて用意された、一人だけの部屋。まるで客人のような扱い。
ジワジワと胸の奥が熱くなって、それと同時に苦しくなる。にやけてくる唇は嘘じゃないのに、コイツらだけが当たり前のように持っている空間に憎しみが募る。
ツンと尖ったイザベラの鼻を思い出した。へし折ってやりたい。何にも知らない世間知らずを、オレの啜ってきた世間の泥で汚したい。苦しさや辛さを知らないような、お嬢ちゃまを泣かしてやりたい。
オレは乱暴に上着を脱ぐと、ベッドに投げつけた。
イザベラの部屋に行こう。そうして今すぐにでも片をつけて、明日には自由の身だ。
ツカツカと石造りの廊下を小走りにイザベラの部屋へ向かう。
ドアの前で息を整え、営業スマイルを張り付けた。場数は踏んでる。わかってる。女がどんな言葉を望むか、どんな男を欲しがるか。
例えば、初恋の人。例えば、失った夫、結ばれない憧れの人。
だから、オレはそれを演じる。そいつらに言って欲しかった言葉を吐く。誰も、オレなんか欲しがってない。



