「それにこの屋敷には子供がいるの。まだ、その子に性奴隷の存在を知られるのは嫌なのよ」
「承知いたしました」
オレは頭を下げる。スカスカした首元が、なんだかこそばゆかった。
いつでも逃げ出せるという心の軽さと、なぜかわからない不思議な不安感。これはいったい何だろう。
逃げ出すとは思わないのだろうか? 疑うことを知らないような世間知らずのお嬢様。
「では、セバスチャン。ジャンに家を案内してあげてちょうだい」
「承知しました。お嬢様」
イザベラはそういって部屋を出て行った。
残されたのは不機嫌そうな老紳士とオレだけだ。オレは呆然とする。
「行くぞ、ジャン」
セバスチャンと呼ばれた老紳士に呼びつけられ、オレは慌てて席を立った。
無言で進む背中は悪意でささくれだっていた。よくあることで慣れている。男からみると、オレみたいなモノは認めたくないらしい。
業務感丸出しで、屋敷の中を案内される。



