小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 なんて話をしていたら、あっという間にレオの部屋につく。中に入ると、いつもの穏やかな表情のクロードがいた。

「やあ、リンネ。今日は素晴らしく綺麗だね。いつもは野に咲く花のようだけど、今日は大輪の薔薇のようだ」

「大げさだよ、クロード」

 女性の褒め方としては最高点をあげたい。先にクロードと会っていれば、もっとテンション上がったのになぁ、全くもう。

「あ、おいしそう」

 用意されていたのはサンドイッチだ。ハムやレタス、サラダをはさんだものもあるようだ。
 ひょいと摘み上げ、遠慮なく口にする。あ、果物が入っているのもあるじゃん。やった。これ大好き。

 勢いよく食べていたら正面にいたクロードがくすくす笑う。

「相変わらずリンネは度胸があるね」

「どひょう?」

「これからお披露目だというのに、それくらい食べれるのはたいしたものだよ」

「何も考えていないだけだろ」

 褒めてくれたクロードに対して、冷たいことをいうのがレオだ。

「むー。せっかくレオのために頑張っているのに、ひどいと思わない? クロード」

「本当にねぇ」

「そうだよ。この婚約、私にはあんまりメリット無いんだからね? レオに好きな人ができたら解消されてさ。私は貰い手がなくなるわけ」

「大丈夫、リンネ。その時は僕がもらってあげるよ」

 にこにこと相槌を打ってくれるクロードに頷きそうになったけれど、いやいや、クロードだって公爵家の後継ぎじゃん。王太子の下げ渡しみたいなのじゃなくて、さっさと良家の嫁をもらえばいいよ。

「いいよ。クロードだっていいお家柄なんだから、親からせっつかれるでしょ。さっさと結婚するといいよ。私はひとりになったら旅にでも出るから平気」