小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 あれが一種の呪いかもしれないと、クロードは王妃様には伝えているのだろうか。
 たおやかで繊細そうな王妃様は、そんなことを知ったら倒れてしまうかもしれないから、詳しくは教えていないかもしれない。私だって、あれが古代文字で書かれたものということ以上は知らないのだから。

「私も実物は長いこと見ていないの。クロードが報告してくれることを知っているだけ。レオもなんにも言わないのよ」

「であれば、きっと大丈夫なのでしょう。レオは王妃様に心配をかけたくないだけです」

「……そうよね。ありがとう。リンネさん。あなたがレオのお嫁さんになってくれるなんて、本当にうれしいわ」

 王妃様にギュッと手を握られると、罪悪感でいっぱいになる。
 王妃様は本当にレオを心配しているのだ。この婚約がいつかは解消されるものだと知ったら傷つくだろうに。

 私は、頭を振ってその考えを振り払った。

 このままレオが引きこもったままでは、いずれ国王になるときに困るのだろうし。最終的にレオが好きな人と幸せになってくれればいいのだ。王妃様はレオの幸せを願っているのだから。だから、私との回り道も無駄じゃないようにすればいい。

 気を取り直して、元気づけるつもりで提案する。