小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

「やった!」

「リンネは筋がいいね」

 クロードに褒められて私はご機嫌だ。新鮮な肉はなんでもおいしいけれど、自分で仕留めたと思えばなおうれしい。

「クロードの教え方がいいんだよ。ありがとう」

「どういたしまして」

 仲良くクロードと話し込んでいると、レオが急に馬の向きを変えた。

「……今日は、この辺にしよう。あっちの雲が怪しい」

 なぜかムッとした表情で、遠くを見ながらレオが言う。

「ああ、本当だね。久しぶりにリンネと遠出できるから楽しみにしていたのに」

「私も。クロードと会うの楽しみにしてたよ。次はいつ会えるかなぁ」

 私とクロードはほのぼのとしているというのに、レオはますます膨れて「行くぞ」と先に行ってしまった。なんなんだ。珍しく機嫌悪いじゃない。

「……やきもちかねぇ」

「なにが?」

「いや? それよりリンネ。今日は夕食も食べていくだろう? さっきのウサギを早速調理してもらおう。伯爵には僕からリンネは遅くなりますと伝えておくよ」

「うん! わーい、楽しみ」

 私は年齢が上がっても、クロードは兄、レオは弟みたいに思っていた。だからこの時のレオの不機嫌の理由にも、全く思い至らなかったのだ。