小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 こんな風に滑り出した学園生活の合間に、狩りのお誘いの日になった。
 クロードと出かけるのは久しぶりなので、とても楽しみである。
 数年前から愛用している上質の乗馬服に身を包み、愛馬にまたがり前を行くレオとクロードを追う。

「リンネ、速くないかい?」

「平気。もっと飛ばしてもいいよ」

 普通の令嬢では出せないようなスピードでついていく私を、クロードが気遣ってくれる。
 そんなに心配しなくてもいいよ! 私、乗馬は大好きだもん。

「えーい!」

 だが狩猟の腕前はいまいちだ。弓を馬上でつがえることはできるが、命中率は低い。

「また外した!」

「まあ、動く獲物をしとめるのは至難の業だよ」

「でもレオやクロードは上手なのに」

 ふたりは狩猟犬とタッグを組んで、すでに本日の夕食になりそうなウサギを三羽ゲットしている。
 だから私が獲物をしとめなくても問題はないのだけど、私は負けるの嫌いなんだよ。

「リンネは馬上で安定していないんだ。腿に力を入れて、まず安定して乗っていられるようにならないと」

 偉そうにレオが言う。
 くそう。昔は私の方が運動できたのに、体も大きくなって筋肉付いたら、すべて追い抜かされてしまった。

「力入れているつもりなんだけどなー」

「そもそも女性の体は男よりも筋肉はつきにくいしね。むしろぶれるのも考慮に入れて狙いを下に定めてみたらどうだい?」

「なるほど。さすがクロード」

 感心して修正を試みる。なるほど、素早く動く獲物に当てるにはまだまだの腕前だが、先ほどよりはいい位置に矢が刺さるようになってきた。