小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 おかしくない? レオが友人を作るのを応援するはずだったのに、なぜ私は、レオに友人作りの邪魔されているのだ。

「ちょ、痛いって。あの、ローレン様ごきげんよう。また明日!」

 レオに引っ張られながら、なんとか挨拶だけはする。ローレンは引きつったまま手を振り返してくれた。そして、〝婚約〟という言葉に、周囲の女生徒たちはどよめいていた。きっと明日には全校中に広まってしまうだろう。

「乗れ」

「これ王家の馬車でしょう? 私にはうちの迎えが来るはずだけど」

「大丈夫だ。俺が送ると言ってある。いいから一緒に乗れ。俺の疲労を少しは癒してやろうと思わないのか」

 一体、どんな目に遭ったのか。顔色も悪いし、学園生活初日は大変だったのかな。

 仕方なく話を聞くために一緒の馬車に乗る。さぞかし愚痴が飛び出すのかと思ったら、レオはふたりきりになったとたん、安心したように大きく息をつき、そのあとは何も話さなかった。なんだよ。せっかく聞くモードになったというのに。

 私は私で、ちょっと不貞腐れていた。

「ああー。明日からまた面倒くさいなぁ」

「なぜだ。婚約中だと宣言しておけば、余計な面倒が増えないだろう」

「レオはね。私はやっかまれるから面倒が増えるんだよ」

「やっかみって……なにをされるんだ?」

 愚痴ってみたけれど、ピンとは来ていないみたい。まあ仕方ないか、箱入りのお坊ちゃんだもんなぁ。

「俺は悪いことをしたのか?」

「……ううん。そうじゃない。気にしないで、ごめん」

 しょぼくれた顔をされたら、こう言うしかないだろう。レオが私を傷つけようとは思っていないことくらい、理解できるもん。