小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 私は女の子たちとはあまり仲良くないので、その輪には交ざらず、教室の端にある自席に座る。しばらく待っていれば先生が来て、あのきゃわきゃわした集団も解散させられるはずだ。

 じっと集団をみていると、ローレンと目が合った。
 私は、敵意はないよという意味を込めて笑顔を向けて手を振ったけれど、ローレンには思い切り目をそらされてしまった。

 解せん。私がなにをしたというのだ。

 やがて先生がやってくる。私達のクラスを担当するのは、タバサ先生だ。三十代の伯爵未亡人である。

「はい、皆様。着席してくださいませ。このクラスには新しくローレンさんが仲間入りします。皆さんは立派な紳士淑女ですから、仲良く親切にできますわね」

 先生はそう言うと、私の方を向いた。

「では、ローレンさん。あなたの席は、空いているあそこになります」

 先生に指さされたのは、私の後ろの席だ。おお、これは神様が仲良くなれと言っているのかもしれない、なんて思う。

 ローレンが気まずそうな顔で私の横を通る。

「リンネと言います。ローレン様、よろしくお願いいたしますわ」

 私としては元気よく朗らかに挨拶したつもりだけど、ローレンはなぜか渋い顔で「……よろしくお願いします」と小さな声で言った。ものすごく嫌そう。

……いやいや、私がなにしたっていうのさ!