「食い気か……」

 ものすごく呆れたような声を出されたが、ここで怯んではいけない、私。

「おいしいもの食べれば元気出るよ。舞踏会だって、王族なんだからずっと逃げているわけにいかないでしょ? 踊らない過ごし方に慣れる意味でも、学園はいい練習場じゃない。友達がいれば話しているだけでも楽しいし」

 まあ私も友達はいないけどな……と思いつつ見つめると、レオはため息をついて私の頬をつついた。

「どうせ父上に頼まれたんだろう?」

「う……そうだけど。でも私がレオを心配してるのも本当だよ!」

 目をそらす私の頬を軽く両手で包み、あきれたように笑う。

「あと少ししかないのに……」

 レオの手がでかいから、指先が耳にかかって、くぐもって聞こえにくい。

「聞こえないよ」

 とムッとしていえば、彼は人を試すときに見せる、眇めた視線を私に向けた。

「分かった。……リンネが俺の頼みを聞いてくれるなら行ってもいい」

 勿体ぶった言い方。なんだか勘に触るけれど、行ってくれるというなら頷くのみだ。

「私にできることなら」

 すると返ってきたのはとんでもない爆弾発言だった。

「では、俺と婚約してくれ。だったら学園に行ってもいい」