小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

「だが、リンネという例外があるしね。最近は王妃様と握手することもできるようになっている」

「改善されているってことは不完全な魔術だったってこと?」

「そうだといいけどね」

 現状では、これ以上のことは分かりそうにない。私はとりあえず納得した。

「でも、無事に救い出されてよかったね」

「あれを無事と呼べるかは怪しいね。救出には一週間もかかったんだ。居場所が特定できているのにも関わらずだよ。ダンカン様はジュード王との直接対決を望んだんだけど、代替わりしたばかりの王には、レオしか子供がいない。レオの代わりは、これから国王に励んでもらえば生まれるかもしれないが、国王がいなくなれば、王家の血筋が途絶えてしまう。レオの救出は、あろうことか忠臣たちによって阻まれたんだ」

「ひどい」

「そうだよね。僕もそう思う。だが、陛下はレオを見捨てたりはしなかった。反対する忠臣を牢にいれ、精鋭を伴ってレオを救いにダンカン様の屋敷に乗り込んだんだ」

「敵の本拠地に乗り込んで、無傷で事が終わるわけがない。血が飛び散るような惨劇が行われ、敗戦を受け入れた伯母は俺の目の前で自決した。父が救い出してくれるまで、俺は彼女の血を浴び続けたんだ」

 レオが静かに告げる。いやいや待って、怖すぎる。八歳ならば、今の私と同じ年だ。そんなものを見せられたら平気でなんていられない。