小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

「リトルウィックとハルティーリアは昔から仲が悪い。だが、交易販路を広げるため、ダンカン様の縁談を機に国交を回復しようとしたんだ。だが、ダンカン様が奥方の言いなりになっていることを前陛下は危惧していたようでね。王位をジュード様に譲られたのも、そのせいだと僕は父から聞いた」

 魔術の国リトルウィックは、東を海に面したハルティーリアの西側にある。現在の地図では、他の大陸諸国と交流する場合、陸路ではどうしてもリトルウィックを通らなければならないため、国交回復が求められたのだという。

「だが、あの政変で再び国交は断絶された。魔術書を入手するのも今では難しいなぁ……」

「じゃあ、文字の解読はできないの?」

「今のところはそうだね。なんとか古代語の本を入手できないか手を尽くしてみるけど」

 とりあえず今のところ腕に描かれた文字の意味は分からないということなんだな。

「ちなみに、この刺青を描かれる前と後で違うことは?」

「女性に恐怖心を感じることかな。触られると吐き気がする」

「じゃあ、そういう呪文なのかな」

 レオにそんな魔術をかける意味は分からないけれど、王太子が女の子に触れられないのでは、跡継ぎが作れないとかいろいろ弊害はあるような気がする。今は子供だからそこまででもないだろうけど、将来的には困るだろう。