「刺青……肌に模様を描くという技術は我が国にもある。だが、それを消すときと同様の方法では消せなかった。だから心配なんだ。ただ悪戯で彼の伯母……ジェナ様が描くとは思えない。だが、じゃあどんな意味があるのかと考えてもさっぱり分からないんだ」
同じくらいの大きさで等間隔に並んでいるから文字だと判断していたけれど、この世界の一般的な文字ではない。絵を記号化したようなものもあればただの引っ掻き傷のように見えるものもある。
「なんか、……古代文明とかの文字に似てるね」
一番近いのが、教科書で見た象形文字だ。あ、でも。あれは前世でのものだから、違うか。
「ごめん、なんでもない……」
「いや、古代……古代語か。そういえば、ジェナ様はリトルウィックの姫だったわけだしな」
だが、なぜかクロードは私のつぶやきに食いついてきた。
「古代語だとすれば、魔術の一部だという可能性もあるな。……調べてみる価値はありそうだね。問題は、魔術に関する資料が少なすぎることだけど」
「魔術?」
私の疑問に、クロードは頷く。
「リンネは魔術という言葉自体聞いたことが無いだろう。我が国では魔術という概念は失われて久しいからね。魔力を持つ人間は、呪文を使って、傷を癒したり、逆に傷つけたりできるらしい。それが魔術で、隣国リトルウィックには魔力を持つ人間が多いと言われている。そのため、学問として魔術が発達しているのだそうだ」
わあ、なんか難しい話になってきた。要はリトルウィックには魔法少女がいっぱいいるって感じでいいのかな。



