「続きは俺が話す。伯父上に騙されたと気づいたのは彼の屋敷に閉じ込められてからだ。それまで優しかった伯母が、血走った目で俺を睨み、地下室にいれた。いつも通される応接室とは違い、薄汚れた部屋で椅子もなかった。そこでようやくこれはただ事じゃないって気づいたんだ」
レオの瞳が憎々しげに歪む。彼の不機嫌な様子は何度も見ているけれど、これはそのどれとも違って、辛く苦しそうだ。
思い出して辛いのならば話さなければいいのに、彼は話し続けた。
「そこで俺は、伯母にこれを刻まれた」
彼はそう言うと、手を離し立ち上がった。袖をまくり上げ、見せられた左の二の腕には、記号とも文字ともとれるものが、十センチくらい渡って刻まれている。
半年前に見たときに、私が落書きだと思い込んでいたものだ。
「これは針で刺して書かれたものだ。攫われてから一週間、飲み物も食べ物も最小限しか与えられず、毎日、伯母にインクの付いた針で刺されたんだ。……あの血走った目が頭からずっと離れない。今思い出しても、情けないが体が震えてしまう」
何それ、怖すぎる! 針で刺すってことは、刺青を彫るのと似たようなものなのかな。やったことないけど、かなり痛そうなイメージだ。
最初に見たときは、てっきり子供の落書きだと思っていたけれど、そんな裏事情を聞いてから見ると、禍々しい空気を放っているように感じてしまう。



