小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 レオはしばらくじっと私を見つめていたけれど、やがて目をそらして頷いた。

「おまえには知っていてほしい」

「レオ。でも……」

「知っていてもらった方が、いろいろと楽だ」

 そう言われると、逆に聞かないのが申し訳ないような気がしてくる。私は黙って一度深呼吸をした。そして目線を上げてクロードを見つめる。

「分かった。じゃあ聞く」

「うん。どこから話そうかな。……まずね、昔のレオはとても人懐っこい子だったんだよ。僕が君くらいのときは、いつも子犬みたいに僕にくっついていた。朗らかでよく笑う子で、城の使用人たちにも好かれていた。そんなレオが変わったのは、一年間の政変のときだ」

 一年前と言えば、王家の代替わりがあったはずだ。それが政変と呼ばれる種類のものだとは、私は知らなかった。

「政変ってなに? 王家の代替わりのこと?」

 私が首をふると、クロードは少しだけ目をそらして考えるような仕草をした。

「血なまぐさい話は、令嬢には知らされないものか」

 そう言って、クロードが話し出した内容はとても重く、私はやっぱり聞いてしまったことを後悔した。