「ほら、行くぞ」
「うん」
レオが先に立ち城にはいろうとすると、「あの」と小さい声で呼び止められる。驚いたことに声をかけてきたのは先ほどの赤毛の令嬢だ。
「レオ王太子様でしょう? 私……」
レオは彼女を一瞥すると、ふん、とそっぽを向き、無視しようとする。
おお、ツンの態度だ。
自分にはされなくなって久しいその態度に見入っていると、突然体がぐらりと傾ぐ。
赤毛の令嬢が、私を押しのけたのだ。こんな細腕の女の子に押されてよろけるなんて、まだまだ私、体幹が弱いんじゃない?
私が反省しているうちに、少女はレオに近づいた。そして、レオの腕をギュッと握る。
「今後何が起こっても、絶対に助かりますから。希望を捨てないでくださ……きゃっ」
「俺に触るな!」
レオは突然彼女を突き飛ばし、逃げるように走っていく。
これにはさすがに私もびっくりした。いくら、人嫌いだからって、女の子を突き飛ばすのはやりすぎだ。
少女に同情した私は、彼女を助け起こした。
「あの……大丈夫?」
「ありがとう。……あっ」
「え?」
驚いたように目を見開き、彼女は私に伸ばした手を引っ込め、気まずそうに視線をさ迷わせている。
なんだろう。まるで拒絶されたような感じ。私、この子に嫌われるようなこと、してないよね。
気まずい空気にどうしたらいいか分からなくなって黙っていたら、大人の男性の声が聞こえてきた。



