「レオ、リンネ嬢! こんなところにいたんですね」
そのうちに、走ってやって来たのはクロードだ。最初に見た貴族服と違い、動きやすそうな素材のシャツの上に胸当てや小手をつけている。そういえば剣術の練習をすると言っていたっけ。いいなぁ、私もどうせやるならそっちの訓練がしたい。
「先生が困っていましたよ。礼儀作法の時間なのに、散歩すると言って逃げていった、とね」
「……それ、困っているんじゃなくて怒っているんじゃ……」
「そうとも言います。さ、謝らないといけませんよ。先生だって暇じゃないんです。わざわざあなた方のために時間を割いてくださっているんだから」
「頼んでないのに」
ぼそりとレオが言ったが、クロードに睨まれ、口をつぐむ。
「クロード様。先生には謝るから、これからは運動する時間も作ってくださいな」
「運動? リンネ嬢は女性騎士にでもなりたいのですか?」
「そういうわけじゃないけど、体がなまって仕方ないもの。それに、レオ様も運動したほうがいいと思います。ツンツンする余裕がなくなって、よく話すの」
私がそう言うと、クロードはまた吹き出した。なんだか笑われてばかりのような気がする。
「それは気づかなかったな。でも……そうですね。さっきもずいぶん打ち解けていましたもんね」
「それ。その、丁寧な言葉もやめて欲しいです。クロード様の方が年上で身分も高いのに、気が引けますもん」
率直に言うと、クロードは美しい顔を少し傾げてふむ、と言う。



