小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

「挙動が怪しいから連れてきたんだ。とりあえず僕にも状況を説明してくれるかな」

 クロードはそう言って、ぐいとローレンを前に押し出した。彼女はすっかり半泣きになっている。

「あーん。ごめんなさいー。まさかこんなに効果が出るなんて思わなかったんだもの。ちょっとリンネをモテモテにして、多方面にぎゃふんと言わせたかっただけなのにー」

「ローレン嬢、ちょっと意味が分からない、僕は」

 クロードが頭を抱えている。そりゃそうだ。お貴族様は〝モテモテ〟も〝ぎゃふん〟も使わないよ。ローレンったらテンパって言葉遣いがおかしくなってる。

「だって、……あの人たち、リンネのこと馬鹿にしたんだもん。レオ様には似合わないサル女とかひっどい悪口言うから! あの人たちの旦那様が、リンネに夢中になればいいって思ったんだもん」

「ローレン」

 一応、彼女なりには私を思ってのことだったらしい。……けど、悪いけど、私は怖かったよ!

「……つまり、君は媒体の効果までは分かっていなかったわけだね。ならば、悪気がないことくらいは分かる」

 ライリー様はため息をつき、クロードは可哀想なくらい頭を抱えていた。

「よりによって、こんな大事な宴でそれをする……? それに、僕は君に治癒魔法を覚えろと言っただけだよ。なんで余計な魔法まで覚えるんだよ」

 クロードからのお小言に、ローレンは負けじと言い返す。