小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 ライリー様はレオの見守る中、私の頭に向かって長ったらしい呪文を唱えた。
 何が変わったのか私には分からない。レオも分かっていないみたいだ。ただ、ライリー様は納得したようにぱっと手を離した。

「おそらくこれで大丈夫です。それから、この髪飾りはリトルウィックでは魔道具として売られているものです。女性の魅力をアップするもので、蝶というモチーフに魔力を高めるような鉱石配置がなされています。どちらでお買い上げに?」

「これはローレンと一緒に」

 あの辺りはレットラップ商会から仕入れている店も多くあると聞いている。もしかしてこれも、リトルウィックからの輸入品だったのだろうか。

「魅了の魔法がかけられた状態でこれをつけていることにより、効果が高めてられてしまったのでしょう。つけるときは気を付けたほうがいいですよ」

 そう言って、ライリー様は髪飾りを私に返してくれる。

「つまり、……誰かがリンネに魅了の魔法をかけたというのか?」

 彼の説明を信じるならそういうことになる。この国で魔法を使える人間なんて、限られている。目の前のこの人じゃなければ、ローレン一択だ。

「ローレン!」

 頭にきて捕まえに行こうと走り出した私を、レオが止めた。

「落ち着け、リンネ」

「だって、この魔法かけたのきっとローレンだよ!」

「あんな社交の場で追及などできないだろ。ここで待ってろ。俺が連れてくる」

「その必要はないよ、レオ」

 扉が開いて、姿を現したのはクロードとローレンだ。ローレンは腰をクロードに抱かれている。……というか、逃げないように拘束されていた。