小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 そうして、私は隣の部屋に連れてこられる。部屋は使用していないから暗く、人けがない。
 しかも彼は私を壁際に追い詰めると、私を囲うように壁に両手をついた。

 ちょっとちょっとちょっと待ってー! これって壁ドンとかいうやつ。
 え、実はやばい状況なのか? いやでも、この人私を助けてくれたんだよね? じゃあなんて今襲われてるみたいになってる?

「あの、私別に具合悪くはないんですけど」

「分かってるよ。あれは連れ出す方便。ごめん、じっとしててね。君から魔法の気配を感じるんだ。状況を確認させてね」

 ライリー様の説明に、私は抵抗をやめた。

「魔法ですか?」

「そう。しかも、魅了のものすごい強力なやつ。こんな人の多いところで、この魔法は危ないよ。下手したら襲われる」

 いや、傍から見れば、今の状況の方が危なく見えると思うけどな。ふたりきりだし暗がりだし、壁ドンされてるし。

 ライリー様は私の頭を指で何度か押したり、頬を触ったりしてくる。

「んーでも。力自体はそんなんでもないんだな。ああ、これだ」

 そして髪飾りを外される。ぱらり、と留めていた髪が一筋、落ちてきた。乱れた髪が、落ち着かない。ライリー様は善意で触っているんだろうけど、レオ以外の男の人に、こんな風に触られるのは怖くて気持ちが悪い。
 でも、魔術がかかっているといわれたら、おとなしくしているしかないのだろう。