「布ってなんだ! 失礼だぞ!」

「えっと、だってなんて言えば……」

 ここには、Tシャツという言葉はない。チュニック? でもそれにしては装飾のない服だったし。じゃあ、パジャマ?

 私が考えあぐねていると、「いいからさっさと座れ!」とレオがそっぽを向いた。
 歓迎しているわけではなさそうだけど、追い出したいわけでもないらしい。

「……昨日の服は夜着だ」

 そして神妙に告げられた言葉で、笑ってしまう。
 真顔で言わなくても、正装じゃないことくらいは分かる。そして夜着はパジャマのことだな、というのはリンネの記憶から分かった。

「どうして夜着姿で出歩いていたのです?」

「父上が勝手に貴族子女を呼んだりしたからだ。そんなもの頼んでいない。腹が痛いと言って部屋にこもって、時間近くになったから逃げだして隠れていたのだ。……おまえこそ、なぜあそこにいたのだ?」

 リンネは単純に飽き飽きしていただけだ。子供たちを集めて……とは名ばかりで、親同士も加わる社交場となっていた。父にいろいろ話かけたが、うるさがられたことに腹を立てて、心配させようとこっそり抜け出した。これがリンネの記憶だ。
 だが、そんな構ってちゃん全開な返答をするわけにはいかない。

「ええと……。ちょっと周囲をお散歩していたら迷ってしまって。隠れている子供がいたから、てっきり、追っ手から逃げようとしているのかと思ったのですよ。助けようと思っただけで、身ぐるみはごうなんて思ってはいなかったので信じてくださいね」

「身ぐるみって……それに、おまえだって子供だろう!」

 今度はプンプン怒り出した。人間嫌いというが意外と話すではないか。しかも感情豊かに。