ローレンを同行して城に入城する許可は直ぐに下りた。国王陛下と王妃殿下のレオへの溺愛は半端なく、レオの望みならば大概のことは通ってしまう。

「良かった。これでレオ様とちゃんと話せる」

「ローレン、呪いを解くんだからね。頼むよ」

「分かってるって」

 今日はうちの馬車にローレンを乗せて一緒に来た。いつもの応接室に向かうと、レオの方かになぜかクロードもいる。

「あれ、クロード。どうしたの?」

「今日はレットラップ子爵令嬢が同席すると聞いたから、ご挨拶をと思ってね」

「はじめまして、クロード様。ローレン・レットラップと申します。お見知りおきを」

「こちらこそ。実は君のお父様にはいろいろとお世話になっていまして……」

 私は、クロードとローレンがにこやかに話しているのを、しばらく見つめていた。視線を感じて横を向くと、レオがこちらを見ている。

「……なに?」

「いいや、何でも」

 最近のレオはこのセリフが多い。なにか言いたいことがありそうなのに、いつもはぐらかされる。

「言いたいことがあるならはっきり言ってよ」

「なんでもないと言っているだろう」

 やがて口喧嘩に発展した私たちを、今度はクロードとローレンがじっと見ている。

「あ、ごめんなさい」

「相変わらずだね、ふたりは」

「そう言わないでよ、クロード」

 成長してないって言われているみたいで、情けなくなるじゃないか。

「レオ様。今日からよろしくお願いいたします」

 私とクロードが話し出したのを機に、ローレンはレオとの距離を詰めていった。
 レオは「ああ」と答えながらも一歩引いている。やっぱり気分が悪くなるのかな。だけど、ローレンと仲良くならないと未来がないんだから頑張れ。

 私の願いが通じたのか、それともやっぱりふたりは運命の相手だったのか分からないけれど、その日、レオはローレンがそばにいることを嫌がらなかった。積極的に話しかけることはないけれど、ローレンから話しかけられれば、きちんと応じている。

 私は心配半分、そして半分はなんだか少しいらだっていた。

 理由は分からない。きっと、レオに無理をさせてしまったことへの自分への怒りなんだ。うん、きっとそうに違いない。