「口で言わなくても、リンネが私とレオ様を引き合わせてさえくれれば、私は彼の呪いを解くことができるのよ」

「そうなの?」

 こんなところに救世主が! と思って見つめると、ローレンは少し気まずそうに肩をすくめる。

「あたり前でしょ。私はヒロインよ。ヒーローであるレオ様とは出会うべくして出会うの。レオ様は私の最推しなんだからね。死ぬなんて耐えられない。なんとしてでも助けなくっちゃ」

 最推しかどうかは置いておいて、助けなきゃというところには同感だ。あの魔法陣を消せるもんなら、なんでもする。

「じゃあ私はどうすればいい? 何かできることがあるなら教えて」

「リンネは……そうだな。私をいじめているふりをすればいいだけ」

「いじめ? なんで」

 意味が分からない。レオを助けることと、私とローレンの関係は全く別物だと思うのだが。

 私もたいがい説明が下手だが、ローレンも負けていないようだ。そういえば赤点仲間だったな……と遠い目になってしまう。

「それが私とレオ様の仲を深めることになるの。原作ではね、レオ様はもともと、王妃様に押し付けられた婚約者であるリンネが好きじゃないの。ずっと付きまとってくるリンネに辟易しているわけ。でも一応婚約者じゃない? リンネの評判の悪さは王家の評判にもつながるでしょう? だからリンネの動向は常に見張っているの。それで、私への態度があまりにひどいことを見かねて、私に声をかけてくれるようになるのよ」

「なるほど?」

 少し現実と違うんだな。今の私とレオは親友のような間柄だし、レオが唯一触れる女が私だというのに。