先輩は掃除を手伝ってくれると言う。

その言葉に甘え、色々と話しながら部室を掃除していく。



部室は思ったより綺麗になった。

ヒロ先輩が手伝ってくれたおかげ。

あとは昨日、試合だったので出来なかったボール磨き。

毎回練習後のアタシの日課。

今日も一日ありがとう、お疲れ様でしたの思いを込めてひとつづつ、ボールを磨く。

「俺さ、…好きな子いるんだ。」

正面から少し外れたところに寄り掛かる先輩がボソリと言う。

「そうなんですか!!その人幸せですねー、ヒロ先輩に想われて。」

ヒロ先輩『彼女』じゃなくて『好きな人』がいるんだ。

「どんな子か、知りたい??」

「…んー、どうかな。って先輩、聞いて欲しいんですか??」

意外と子供みたい。

「一生懸命で、真面目で…。」

その人の事を口に出しながら、想っているのだろうか。

「ちょっと一途すぎるのが気になるけど。」

「ふーん。」

「可愛い、サッカー部のマネージャーなんだ。」

「!!」

な、に言ってるんだろうヒロ先輩。

サッカー部のマネジャーって、アタシの他に……。

背中を向けたまま、動けないよ。

先輩の視線を身体中で感じる。

「マジだよ、俺。」

「………。」

「旬磨も、気付いてる。」

アタシは手で口を覆った。

「俺が、アイツの事忘れさせてやれたら、いいのにな…。」

アタシの中に存在する『潤くん』『亜子ちゃん』『旬磨先輩』そして『ヒロ先輩』。