「まあでも、今まで翔斗くんと過ごしていた時間を違う誰かに渡すのはわるいことじゃないよ。それは三琴先輩も同じだと思う」
「…そうかなあ」
「昨日だって、三琴先輩の意思で紘菜のこと誘ってくれたんだし。恋愛対象どうのこうのはおいておいても、感情を共有できる異性がいたっていいんじゃないかなぁ」
痛いとか、悲しいとか、辛いとか。
三琴先輩と私はその気持ちを知っている。
そんな似た者同士の私たちが、慰め合っているのは悪いことではない、らしい。
やっぱりエナちゃんは私の自慢の親友だ。
彼女の言葉で抱えていたもやもやが少しだけ晴れたような胃がする。
「ありがと、エナちゃん」
「いいよ。ついでにチョコあげる」
「えーやさしい。明日雪でも振りそうだね」
「紘菜、私をなんだと思ってるの」
「血と涙が微量の無機質女子」
「微量、ね。あながち外れてもないね」
その直後、予鈴がなって担任の青島先生が入ってきたので、私とエナちゃんの会話は遮られてしまった。
もらったチョコを口の中に放り込み、口の中に広がる甘さを噛みしめる。
良い友達と、良い先輩。
好きな人がいない世界でも、私はちゃんと生きていける。



