「───は?キスされた?」
2日後の昼下がりのこと。
駅地下にあるお洒落なカフェで、私の話を聞いたエナちゃんは眉間にしわをよせ、あり得ないと言わんばかりの表情を浮かべた。
エナちゃんの顔がこわい。
不可抗力だったとはいえ、やっぱり付き合っていない男女が触れ合うのはダメだよね…。
それはわかってる。だからこそ、あの時の三琴先輩の心情が知りたいとも思う。
曖昧なままでも良いと、真渡くんに教えてもらったのだ。
エナちゃんに、キスに至る経緯と その後から一度も連絡取り合っていないことを伝えると、彼女は何故か納得したように「なるほどね…?」と呟いた。
なるほど……とは?
「紘菜はどう思ったの?」
「え?」
「三琴先輩にキスされて、どう思った?」
三琴先輩の温度を一番近くで知ったとき、一番最初に感じたのは悲しさだった。
自分がふがいないせいで先輩に謝らせてしまったことが悲しくて、そして後悔した。
……だけどすこし。
ほんの少しだけ───その温度が恋しかったのだ。



