「大槻さんってさ、結構鈍感だよねー」
思わず顔が歪む。「すぐ怖い顔しないでよ」といって真渡くんが笑う。
鈍感?私が?
どこが、どんな感じに?
「いや、鈍感っていうか自分に自信がないだけ?なんだろ、とにかく勿体ないよね」
頭で思うことはあるのに、それらをひとつも言葉にできないまま、真渡くんは次々にことばをならべていく。
「なんだっけ、この間大槻さんが声かけてた女の先輩。あれがライバルって結構手強いよね」
「だから、そんなんじゃ…」
「浴衣。あの先輩のために新しく買ったんじゃないの?」
「え、」
「この間シフト被った時、少しだけ中身見えた。覗きとかじゃないから」
ストックルームの荷物置き場はロッカーみたいに個々で分けられているわけではないので、自分の荷物を置くときに私の大きな紙袋に入った浴衣が目についたのだろう。
真渡くんは、空気は読めないくせに人の態度や顔色に敏感みたいだ。
いや、もしかしたら敢えて空気を「読まない」のかもしれない。



