「昨日はフェルゼン、どうだった? 首尾よかった?」
シュテルが、さわやかな笑顔で尋ねる。これは夜会など、社交行事があった時には毎回恒例だ。遊び人と噂されるフェルゼンの釣果を、遊び半分、冷やかし半分で尋ねるのだ。
「マレーネ姫と踊ったよ」
フェルゼンがニヤニヤして答える。マレーネ様はシュテルの妹だ。言うなれば王女である。妹にちょっかい出したぞと、からかっているのだ。
「傷物にはしないでくれよ、あれでも王女だから」
シュテルは気にもしないように、笑って答えた。
心配なんかしていない。遊び人と言われていても、フェルゼンが一線を越えないことを男友達は知っているからだ。その時その時に甘い言葉を囁いてはいるようだけれど、実際にトラブルになるなんて話は聞いたことがなかった。



