俺は茫然としていた。息もできないくらい胸が苦しくなって、鼻に水が入ったみたいに痛くなった。あの湖の中にいるよりも苦しいと思った。 アイスベルク侯爵は俺を見て、穏やかに笑った。もう冷たい目線ではなかった。 そして、俺の頬をゆっくりと撫でた。温かい手。 「君まで泣かしてしまったね」 そう言われて初めて、俺は泣いていることを自覚した。