暫くしてベルンの目が覚めたと知らせが来た。
 俺は慌ててベルンの部屋に向かった。
 当然、中にはアイスベルク侯爵がいた。
 ベルンは体を起こして、顔を真っ赤にして唇を噛んでいる。

「良いところに来た。フェルゼン、君も座りなさい」

 優し気なアイスベルク伯爵が、俺を見つめた。

「フェルゼンは!」

 ベルンが声をあげれば、アイスベルク侯爵は凛とした声で制す。

「ベルン、まだお前に話す権利を与えていない。黙りなさい」

 ベルンが弾かれたように身体を硬直させた。
 ビクリと俺の体も強張った。父上以上の威圧を感じる。いつも優しい穏やかな人だからこそ、ピリピリとした空気が痛かった。
 初めて侯爵を怖い人だと思った。