自分で初めて作り上げたブーメランだ。すごく悔しくて、惜しくて、絶対取り戻したい、そう思った。
我が家の使用人がいれば、迷わず取ってこいと命じただろう。
でも、ここは王都とは違うのだ。
周りの戸惑う空気がわかる。みんな、俺が取り戻したいと思っていることを知っている、そう感じた。
ウォルフが戸惑うように呟いた。
「もう水が冷たいから、入るなって言われてるんだよな……」
「あそこは深いから、泳がなきゃ無理よ」
応えるようにもう一人の女の子が言う。
夏だったら取りに行ってくれたのだろう、そう思える口ぶりで、俺は固く唇を噛んだ。
仕方がない、諦めるしかない、わかってもらえただけで充分だ。
本当は諦めたくない、でも、ここで貴族の俺が騒いではいけないと思った。そうしたら、きっとこの楽しい時間は終わってしまうのだ。



