「おや、お嬢様見違えましたね」 冷やかすようにお兄様が笑った。 「私はさっきの格好も好きだよ」 お父様も笑う。 「私、両方とも好き!」 ドレスアップするのも楽しいし、気楽な格好で駆け回るのも好きだ。 「ベルンは両方とも似合ってるよ」 お父様が笑って、私の頭に手を乗せた。 「さぁ、お待ちかねのヴルカーン侯爵がお見えだ」 先ほど見た立派な馬車が横付けされる。 御者がドアを開けば、ヴルカーン侯爵が堂々と降りて来た。