【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


 ベルンの濃紺の髪に、桃色のムクゲの花が映える。
「ありがと!」
 ベルンは屈託なく笑った。
 夕映えの中のふたりは、まるで完成された世界だ。
 シュテルは、ベルンが女だと気付いてる?
 俺はゾッとしてベルンの横に並んだ。
 そして、シュテルに笑ってみせる。
「俺にはないのかよ、王子様」
 シュテルはプッと吹きだして、俺の耳にもムクゲを挿した。ベルンがそれを見て、シュテルの耳に花を挿す。
「うん、ふたりともカワイイね」
 ベルンがそう言って微笑んだ。俺たちは顔を見合わせて、思わず笑う。従者たちもニコニコと笑った。
「さあ、帰ろうぜ!」
 俺は手綱を引いた。ベルンたちがそれに続く。

 青い闇が茜空を染めはじめた。耳元のムクゲが、俺の心をくすぐるようにこそばゆく揺れた。