「ねぇ! あの白い花はなんの花?」
「ムクゲと申します」
 興奮するベルンに森に詳しい従者が説明してやっている。
「ムクゲ、ムクゲ」
 ベルンが忘れないようにと復唱する。それを従者は嬉しそうに眺めている。
「あちらの八重のものも同じ種類です」
「わぁ、いろんな色があるんだね」
「向こうのものは今は白ですが、徐々に色が変わるんですよ」
「何色になるの?」
「帰りにお確かめ下さい」
「うん! そうする!!」
 俺たちを放って、従者とキャイキャイとはしゃぐベルンを見て、俺はなんだかムッとする。ふとシュテルを見れば、シュテルも少し顔をしかめていた。