「一年前の私だったら想像できなかったでしょうね」
クラウトは笑った。
「ああ、君、結構失礼だったもんね」
「……ごめんなさい」
恐縮したように頭を下げる。ちょっと意地悪だったかも。
「うそ、怒ってない。さぁ、首を上げて」
クラウトは顔を上げてた。照れたように目を泳がしている。私はクラウトの首に光る候補生の証を取った。そして自分のポケットにしまってあった候補生章をクラウトにつける。
襟元に鈍く光る候補生の証。
「あと一年、楽しんで」
「はい! ありがとうございます!」
クラウトが部屋を出て行く。机を綺麗に拭いて、窓の外を見た。まだみんな名残惜しそうに校庭にたむろしている。
カーテンが風になびいて揺れる。



