「今年はまたスゲーな」
フェルゼンが笑っている。シュテルも笑っている。下ではクラウトが大きく手を振って、あんなことする子なんだ、なんて意外な一面を知る。
キラキラとした多くのまなざしが、今か今かとハット・トスを待ちわびている。中に髪を一つに結わえ、模造剣を差した少女がピョンピョンと跳ねていた。
「さあ! 投げろ!」
シュテルの声に合わせて、たくさんの帽子が舞い落ちる。クルクルと回っていく白い帽子は壮観で、たくさんの手が伸びて花の様に綺麗だ。
私は模造剣を差した女の子に向かって帽子を投げた。無事に届けばいいけれど。
そう願ったけれど、その帽子は手前の少年に取られてしまう。
あらら、と思ったらその少年は振り向いて、私の帽子を少女の頭に被せた。そして二人で頭を下げて、大きく手を振ったから、私も大きく手を振り返した。
なんだか懐かしい姿を眩しく感じる。



