「なんだよ、泣くなよ」
「待ってたんだぜ」
「間に合って良かったよな」

 うつむく頭にたくさんの手が乗ってきて、グシャグシャと頭を撫でていく。そんな距離感も前と変わらなくて安心した。

「ありがとうじゃないだろ?」

 フェルゼンが私の顔を覗き込む。久々に見る焼けた肌。赤い瞳が優しく微笑む。

「おかえり、ベルン」

 フェルゼンがもう一度言った。
 私はそれを聞いて微笑む。

「うん、ただいま」

 ここへ帰って来た。ここにはまだ居場所があった。