「アイスベルクは、王族とは結婚しないんでしょう?」
シュテルはイタズラっぽく笑った。
私は言葉もない。
「学校のみんなは知ってるよ。僕が君のために名前を早く捨てたって。あーあー、これでフラれたら、僕、いい笑いものだよ」
「ちょっと! シュテル!!」
外堀から埋められているらしい。相変わらず、悪魔のような天使だ。
「危ない橋を渡らないってベルンみんなの前で言ってたもんねー」
「それはそうだけど、そういう意味じゃなくて……!」
シュテルは伺うように私を見た。
「ダメ?」
「……ダメじゃない、けど、ズルいっ!」
怒って見せれば、シュテルは全然反省していないように笑った。私もつられて笑ってしまう。
二人で笑いあって一息つけば、シュテルは真剣な目で私を見た。
ああ、あの魔法を使われてしまう。動けなくなってしまう。



