【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「アイスベルクは、王族とは結婚しないんでしょう?」

 シュテルはイタズラっぽく笑った。
 私は言葉もない。

「学校のみんなは知ってるよ。僕が君のために名前を早く捨てたって。あーあー、これでフラれたら、僕、いい笑いものだよ」
「ちょっと! シュテル!!」

 外堀から埋められているらしい。相変わらず、悪魔のような天使だ。
 
「危ない橋を渡らないってベルンみんなの前で言ってたもんねー」
「それはそうだけど、そういう意味じゃなくて……!」

 シュテルは伺うように私を見た。

「ダメ?」
「……ダメじゃない、けど、ズルいっ!」

 怒って見せれば、シュテルは全然反省していないように笑った。私もつられて笑ってしまう。
 二人で笑いあって一息つけば、シュテルは真剣な目で私を見た。

 ああ、あの魔法を使われてしまう。動けなくなってしまう。