【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「ねぇ、『好きだったよ』ってどういう意味?」

 シュテルに問われて、私は恥ずかしくて答えられずにいた。

「過去形なのはなんで? もう好きじゃない?」

 あまりに悲しそうな声色に、慌てて顔を上げる。
 見たこともない不安そうな顔。

「そうじゃない! でも、もう二度と会えないと思ったから。本当のことを知ったら、嫌われると思った。……ゴメン。嘘ついててゴメン」

 うなだれる頬に、シュテルがそっと手を添え、顔を上げさせられる。

「僕こそ嘘つかせてゴメンね。好きだよ、ベルン。君が君だったらそれでいいんだ」

 シュテルの言葉が沁み込んでくる。ユルユルと心の中に固まった何かが解けていく。