【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「ベルン」

 シュテルに名前を呼ばれて、ドキンと胸が跳ねた。

「その格好も、似合ってる」

 シュテルが顔を赤らめて照れたように笑った。
 唐突な言葉に驚いて、私まで顔が熱くなる。

「あ、ありがとう……」

 俯いて爪先を見た。どうしていいのか分からない。
 シュテルもそれっきり何も言わないから、窺うように上目遣いで見てみれば、シュテルの唇が目に入って、慌てて目を伏せた。

 無理やり、キスしちゃったんだよね……。

 緊急だったとはいえ、なんてことをしてしまったんだろう。
 これで会うのは最後だと思ったから出来たことだけど、こんなふうに顔を合わせることになってしまって、とても気まずい。