【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


 ふとウォルフを見れば、柔らかな目で私を見ていた。行ってこいと語る瞳だ。

「ベルン様、嫌になったらいつでも帰ってきてください。あなたの帰る場所はここだ」
「……うん」
「ご武運を」

 何時でもそう。ウォルフはそうやって私の背中を押してくれる。大丈夫だって言ってくれて、失敗して逃げ帰ったとしても、受け入れてくれるのだ。

「ありがとう、ウォルフ」

 ウォルフは目礼をして、馬に跨る。そして振り返らずに駆けていった。