【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「やめて!」

 再び二人の間に入る。
 二人とも傷つけたくない。傷つけあって欲しくない。

「ウォルフ、剣を収めろ。これは命令だ。シュテルも剣を仕舞って」

 私の言葉に、渋々というように二人は剣を仕舞う。

「いったい、なんなんだよ!」

 ムカムカとせり上がってくる。なんで二人が傷つけあわなくてはいけないのか。意味が分からない。

「ベルン、選んで」

 シュテルが言った。

「なにを」
「僕と王都へ来るか、アイツとここへ残るか」

 ウォルフは黙ったままこちらを見ている。真っ黒な瞳が私を捕らえるように見つめている。