「この方は王子だ! 剣を向けるようなことは許されない!」
「知っている! だが今更なんだというのだ!」
嚙みつくようにウォルフは叫んだ。獰猛な獣のようだ。
「王子というだけでベルン様の背に守られて安穏と生きている奴が、隣に並べると思っているのか!」
ビリビリとするほどの怒りだ。
シュテルは黙って、私の背から前に出た。
「僕は姓を置いてきた。もう王族じゃない。不敬には当たらないよ」
シュテルの言葉に息を飲む。だって、まだ早い。成人は二十歳だったはずだ。
シュテルはスラリと剣を抜いて構えた。ウォルフと睨みあう。
キンと凍える空気が緊張をはらんで、今にも砕けてしまいそうだ。



