【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 
「迎えに来た」

 迎えに来た、そう言った。ここは私の領地で、ここが私の居場所なのに、シュテルは私を迎えに来たと言う。

 恐る恐るシュテルの顔を見た。
 優しく微笑んでいて泣きたくなる。
 名前を呼びたくて、でも声が出なくて、息を吸った。

 そこへ馬の蹄の音が響いた。
 見ればウォルフが、ヒラリと馬から舞い降りて私に走り寄った。

「ベルン様から離れろ!」

 ウォルフが剣を抜く。シュテルに剣を向ける。

「ウォルフ! 止めて!!」

 慌ててシュテルを背に庇う。