私はあれからアイスベルクの領地に戻った。お母様はいつものように出迎えて、私の好きなものを用意してくれた。

 士官学校には、その日のうちに退学届けを出した。受理されたかは不明だ。あの事件は、大問題に発展しており、いまだに私に沙汰はない。

 何しろ、北の国の姫君自ら、明らかな害意をもって我が国にモンスターを持ちこんだのだ。モンスターに操られたのだとしても、許されるものではなかった。
 でも、あの北の国の姫君の気持ちが、私には痛いほどわかってしまう。望んではいけないとわかっていても、シュテルが欲しかったのだ。魔物の言葉に惑わされたのは、それだけの大きな情熱があったからだ。
 私だってあの時、リリトゥの声につられそうになった。シュテルが手にはいるならと、一瞬考えた。でも、あんなやり方だとシュテルに嫌われると思ったから、踏みとどまれた。手に入っても、嫌われてるなんて悲しすぎる。