【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「……僕に、話してよかったの?」

 きっとずっと二人だけで守られていく約束だったはずだ。
 これを僕が知って、僕が怒り、誰かに伝えたら、ヴルカーンもアイスベルクもただでは済まない。

「お前は仲間だからな」

 フェルゼンが情けない顔で笑った。

 胸の奥がパチンと弾けた。

 崩れ落ちたと思っていた世界がここにある。僕の足もとは守られている。ベルンとフェルゼンに、嘘に、守られていた。

 僕はフェルゼンの肩を掴んだ。

「ベルンを連れ戻す。協力してくれ、フェルゼン」

 なんとしてもベルンを連れ戻す。僕たちだけがのうのうと、なにも無かったことにして生きていくなんてできない。

「お前より先にそれを言えない俺は……、だから駄目なんだろうな」

 フェルゼンが笑った。
 もういつもの笑い方だった。