「それなのに、俺はアイツを守れなかった。そして、これからも知らなかったと嘘をつく。俺だけが守られたんだ。もう守りたくても守れない。アイツにはかかわれない」
「どうして」
「幼年学校の入学が決まったとき、アイスベルク辺境伯と約束した。ベルンの純潔を守る。バレた場合は、知らなかったふりをして一切の交流を断つ。意味は分かるだろ?」
シンと静まり返る。部屋の空気が重い。
ヴルカーンとアイスベルクが結託して、娘を士官学校にいれたとなれば、あらぬ疑惑を生むのはたやすい。片や元帥閣下、もう片方は参謀であり唯一の私兵をもつ侯爵家。両家が結託して軍部を牛耳ろうとしたとあれば、国家転覆の危機につながる。
フェルゼンは絶対に関わってはいけないのだ。
もし僕がそれを知っていて、見逃していたとなったら、僕の地位は完全に奪われるだろう。最悪の場合は、全員死だ。
「お前にまで嘘をつかせたくなかったんだよ」
ゴメン、フェルゼンがそう言って項垂れる。



