ため息を吐き出すように、フェルゼンが僕の名を呼んだから、カッとなった。
 立ち上がって詰め寄って胸ぐらをつかむ。壁にフェルゼンを押し付ける。
 僕より大きなフェルゼンが、嘘みたいにされるがままで、そのことがまるで馬鹿にされているかのようで、止められない。

「君は知っていたのか!!」

 睨みあげれば、無言で睨み返す赤い瞳。

「なあ! 知っていたのか!!」

 怒鳴りつける。
 なんで黙っているんだ。それは肯定じゃないのか。

「ベルンが女だったって、君は何時から知っていたんだ!」
「声がでかいんだよ!!」

 フェルゼンが恫喝する。そしてため息を吐き出した。

「初めから知ってた。俺が初めて出会った時、ベルンはワンピースだったからな」

 小さな声だった。